『6.26ラッドウインプスHINOMARU抗議』不当逮捕救援会・抗議声明

 

<『6.26ラッドウインプスHINOMARU抗議』不当逮捕救援会・弁護士の抗議声明>
兵庫県警は仲間と車を今すぐ返せ!

2018年6月27日 『6.26ラッドウインプスHINOMARU抗議』不当逮捕救援会
呼びかけ人:木村真豊中市議会議員)、西山直洋(連帯労組近畿地本)、原口剛(神戸大学准教授)、喜久山大貴(弁護士)、橋本太地(弁護士)

2018年6月26日、兵庫県警が「RADWIMPS」の『HINOMARU』に抗議した人を不当逮捕しました。
警告すら無く運転手を引きずり出し、車や荷物ごと押収した拉致監禁です。
私たちは兵庫県警に仲間と車をすぐに返すことを要求し、全ての方に共に声を上げることをお願いします。

HINOMARU』は、大人気バンドが戦前の軍歌そのものを作ったと大問題になりました。
歌詞:http://j-lyric.net/artist/a04ac97/l0469f5.html
「風にたなびくあの旗に 古よりはためく旗に」
「この身体に流れゆくは 気高きこの御国の御霊 さぁいざゆかん 日出づる国の 御名の下に」
「たとえこの身が滅ぶとて 幾々千代に さぁ咲き誇れ」

以前から「日本頑張れ」系の愛国ソングがW杯の時期に増えていましたが、
この歌が一線も二線も超えたのは、天皇が治める国家のために戦争・戦死することを直接ほめたたえているからです。
侵略戦争の歴史を正当化するとともに、新たな侵略戦争も推進する。
それを「どれだけ強き風吹けど、遙か高き波がくれど」と、今にも日本が侵略されそうな
被害者意識で正当化する。無知や思いつきではなく、周到に練られた戦争動員です。
問題点のまとめ①https://t.co/xwTZyVdo9e
https://rad20186.hatenablog.com/entry/2018/06/24/182006

しかし高まる批判にも、バンドは「何が悪い!」と開き直り、数千人とライブで熱唱。
販売したEMIレコーズとスポンサーのフジテレビは一切沈黙。
そこで抗議者は3者に対し、問題点と要求を詳細に公開質問状で出しました。
https://rad20186.hatenablog.com/entry/2018/06/17/112141
https://rad20186.hatenablog.com/entry/2018/06/17/120342

しかしこれにも回答が無しでした。差別・戦争の扇動がここまで放置された時、世界中どこでも、直接的な阻止行動が行われます。そこで今回のライブ会場前の抗議が実行されました。
抗議者が車を出したのは、『HINOMARU』を支持する右派からの凄まじい数の脅迫メールが
来たため、参加者の身の安全を守る必要にも迫られたからです。
(詳細:https://twitter.com/rad20186 の返信欄)
会場前の車道には、兵庫県警公認のもと、「日本第一党」の京都本部長西村斉、「日侵会」
などの右翼が街宣車で陣取り、「抗議者は朝鮮人だ!出て行け!」「日の丸を歌うのがなぜ悪い!」「ゴキブリ!ウジ虫!」など大音量で流し続けていました。『HINOMARU』がこれらを誘発したのは明らかです。

ところが右翼の車は容認しながら、抗議参加者の車は会場数百Mも手前の交差点で警察に包囲・阻止されました。それでも抗議者はマイクで抗議のスピーチを始め、警察と交渉も始めました。しかしその声が会場へ届くのを恐れた警察は、わずか7分後に「交差点で停車した」「免許証を見せなかった」という罪名で不当逮捕をしてきました。
こんな短時間に、この程度で、運転手を車ごと連れ去る世界がどこにあるでしょうか。日の丸の批判はさせないという国家権力の恣意的乱用そのものです(しかも法的な根拠もありません。後半の弁護士の文章を参照)。

私たちは兵庫県警・水上署に断固抗議し、仲間と車を今すぐ返すことを要求します。6/27~29日に、
10日間の勾留をされるかどうかが決まります。即時釈放の要求をお願いします→兵庫県警:078-341-7441
勾留をするなと声を→神戸地検刑事部: 078-367-6067

そして改めて問われているのは、RADWIMPS・ファン・レコード会社の姿勢です。音楽や表現は、
戦争を賛美し、異なる意見を冷たい監獄に叩き込んで黙らせるためにあるのでしょうか。
右翼・警察の差別や暴力と一体化するためにあるのでしょうか。沈黙はイエスの表明です。
三者を含む全ての人は、『HINOMARU』を問題視し、抗議者を釈放させるために声を上げて下さい。

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HINOMARU抗議行動に対する弾圧逮捕の被逮捕者A氏は無実である」

2018年6月27日
弁護士 喜久山 大貴

兵庫県警による弾圧逮捕の概要
(1)2018年6月26日17時半ころ、A氏はRADWIMPSHINOMARUに対する抗議行動を行うため、LIVE会場である神戸ワールド記念ホール近くで街宣車を運転していたところ、兵庫県警が道交法違反をでっち上げて、A氏をその場で現行犯逮捕した(以下、「本件逮捕」という。)。
さらに、本件逮捕に伴う差押えとして、街宣車から同乗者らを降ろし、車両ごとレッカー車で押収した。街宣車の中には抗議行動で使用する予定のトラメガが積載されており、トラメガは道交法違反と無関係にもかかわらず返さなかった。
(2)警察がでっち上げた道交法違反とは、同日17時20分から17時27分までの間、街宣車を交差点内から移動させなかったことによる①停車禁止違反(44条)、及び、免許証の提示の求めに応じなかったことによる②免許証提示義務違反(95条2項)である。

2 弾圧目的の違法逮捕である
(1)A氏に道交法違反が成立しないことは以下で詳述するが、仮に、警察のいう道交法違反があったとしても、わずか7分間という短時間の停車と、免許証の提示を拒否していたとの事実のみで、逮捕することは通常ありえない。わざわざこの程度の事実で現行犯逮捕に踏み切るのは、法律の適用として極めて恣意的であり、バランスを欠いたものである。
(2)また、警察は、現場の一部始終について採証活動としてビデオ撮影を行なっており、道交法違反の証拠となりうるものは確保している。しかし、道交法違反の証拠物だとして街宣車そのものと、その中にあったトラメガを押収した。明らかに逮捕に伴う無令状差押えの範囲を逸脱している。
(3)つまり、初めから街宣車とトラメガを奪い取ることを目的とした不当捜査であり、HINOMARUに対する抗議行動を弾圧するための違法な逮捕であることは明らかである。

3 具体的な事実経過
(1)A氏は、街宣車を運転し、LIVE会場である神戸ワールド記念ホールの出入り口に面し、神戸国際展示場に挟まれた道路(以下、「LIVE会場前の道路」という。)に進入するため、スポーツセンター南側の幹線道路からT字型の交差点を左折しようとした。しかし、LIVE会場前の道路にはカラーコーンが設置され、車両が進入できないように封鎖されていたので、仕方なく左折の方向指示器を点滅させたまま、T字路角の道路上に一時停止した。
近くにいた警察官が集まってきて、街宣車の同乗者に向かって、LIVE会場前の道路には入れないと申し向けたので、同乗者は「普段は通行可能なのに、どうして今日は通行できないのか」旨尋ね、警察官は「LIVEがあるので、歩行者専用道路となっている」などと答え、押し問答となった。
その間に、多数の警察官が街宣車を取り囲んでビデオ撮影を行いつつ、他の場所に移動するよう命令した。
(2)さらに、警察は、A氏に対して免許証提示を求めたが、A氏はこれに従わなかった。
(3)街宣車がカラーコーンの前で停止した7分後、警察はA氏を①交差点における停車禁止違反と②免許証提示義務違反を理由に現行犯逮捕した。

4 道交法違反の不成立
(1)停車禁止違反の点について
ア A氏はLIVE会場前の道路に進入しようとしていたところ、その入り口がカラーコーンで封鎖されているのを発見し、T字路の角で一時停止していたに過ぎない。
また、一時停止後、LIVE会場前の道路に進入できるか否かについて同乗者と警察官との間で、押し問答が行われていたのであり、A氏は街宣車を移動させることができなかった。
さらに、街宣車の周りを警察官が取り囲んでおり、左折を諦めて直進するために移動させることもできない状況であった。
したがって、警察は、自らカラーコーンで道路を封鎖し、さらに街宣車を多数人で取り囲んでおきながら、T字路の交差点から街宣車を移動させなかったとして、停車状態をでっち上げた。

イ さらに言えば、A氏が進入しようとしたLIVE会場前の道路は、その当時、歩行者専用道路として封鎖されていた。すると、普段はT字路の交差点として利用されていた本件逮捕の現場は、その当時、法的には直進道路となっていたから、「交差点」(44条1号)に該当せず、停車禁止場所ですらなかった。

ウ したがって、A氏に停車禁止違反は成立しない。
(2)免許証提示義務違反の点について
ア 免許証の提示は、a.酒気帯び運転の疑いなど危険防止のために車両を停止させる場合と、b.交通事故で人を死傷させ、もしくは物を損壊した場合、c.道交法に違反した場合に限り、警察官の求めによって提示義務が発生する(95条2項、67条)。

イ 本件逮捕について、免許証提示義務が生じたとされるのは「道交法に違反した場合」に該当すると警察が判断したためである。しかし、上記のとおり、A氏には停車禁止違反が成立しないため、提示義務は発生していなかった。
A氏に提示義務がないにもかかわらず、免許証を任意に示さなかったことで逮捕することはできないのであり、免許証提示義務違反も成立しない。
(3)停止禁止違反をごく短時間で認定したこと
ア 上記のように、警察は、A氏がT字路角に街宣車を停止してから7分後には、停止禁止違反及び免許証提示義務違反で現行犯逮捕しているが、現実には、7分よりはるかに短時間で停止義務違反を認定していたことになる。
イ なぜなら、警察は免許証提示義務の発生を前提として、A氏にその提示を求め、一定時間の経過によって、提示を拒否したと認め、A氏を現行犯逮捕しているのである。
遡って考えると、免許証提示義務の発生は、道交法違反の事実があった場合であるから、一時停止の後、おそらく3〜4分程度のごく短時間で、停車禁止違反を認定し、免許証の提示を求め、さらに(3分程度の)一定時間の経過をもって、免許証提示義務違反を認定したと考える他ない。
ウ そうすると、現行犯逮捕の理由としては、停車禁止違反を、「17時20分から17時27分まで」の7分間としたものの、現実には、それより遥かに短時間で停車禁止違反の事実をでっち上げていたということになる。
つまり、免許証提示義務違反でも、A氏を現行犯逮捕したということは、街宣車が7分間移動しなかったことによって、停車禁止違反となる、という現行犯逮捕の理由説明が、全くのデタラメであることを自ら示していることになる。
(4)結論
A氏には道交法違反はいずれも成立せず、無実である。兵庫県警は現行犯逮捕の誤りを認め、直ちにA氏を釈放しなければならない。
以上